【専門医が徹底解説】変形性膝関節症とは?初期症状から原因、検査、治療法のすべて

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【専門医が解説】膝の痛み、あきらめないで。変形性膝関節症と正しく向き合うための全知識

「変形性膝関節症ですね」

お医者さんからそう告げられた時、「これから私の膝はどうなってしまうのだろう?」「もしかして、手術が必要になるの?」と、大きな不安に包まれた方も多いのではないでしょうか。 病名だけを聞いても、具体的にご自身の膝がどんな状態で、これから何に気をつければ良いのか分からず、暗いトンネルの中にいるような気持ちになってしまうかもしれません。

でも、大丈夫です。ご安心ください。

変形性膝関節症は、その正体と付き合い方を正しく知れば、過度に恐れる必要のない病気です。

この記事では、あなたの膝の未来を一緒に作るパートナーとして、私、整形外科医の堀口が、「変形性膝関節症とは何か」という基本から、原因、症状の進み方、病院での検査、そして治療法の全体像まで、あなたの疑問や不安に一つひとつ、丁寧にお答えしていきます。

変形性膝関節症とは?膝の軟骨がすり減る仕組みを解説

一言でいうと、膝関節のスムーズな動きを守っている「軟骨」というクッションが、少しずつすり減ってしまう状態です。

私たちの膝の中には、「関節軟骨」と「半月板」という大切なクッションが備わっています。これらが衝撃を吸収し、関節の動きを滑らかにしてくれているのです。車でいえば、衝撃を和らげる高性能なサスペンションのようなものですね。

変形性膝関節症は、このサスペンションが長年の使用によって少しずつすり減り、骨同士がこすれやすくなって痛みや変形が生じる病気です。

実は、日本には3000万人以上の患者さんがいるとされており、決して珍しい病気ではありません。60代以上の方が膝の痛みを訴えて来院され、レントゲンを撮ってみると、ほとんどの方に軟骨のすり減りが見られます。

中には、股関節の骨折など他の理由で来院された方のレントゲンに、痛みを感じていない膝の変形が偶然写っている、ということも少なくありません。

変形性膝関節症の主な原因とは?加齢や肥満との関係

「どうして自分がなってしまったんだろう?」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。変形性膝関節症の要因としては、以下の点が考えられます。

  • 加齢: 長年、あなたの体を支えてきた「相棒」である膝。どうしてもクッションはすり減りやすくなります。
  • 肥満: 体重が重いほど、膝への負担は大きくなります。歩くだけでも、膝には体重の何倍もの負荷がかかっているのです。
  • 過去のケガ: 特に、クッションの一つである「半月板」の損傷は、変形のスタート地点になることが多いと言われています。
  • 性別: 残念ながら、女性のほうがかかりやすい傾向にあります。

変形性膝関節症の症状|初期から末期までの進行サイン

変形性膝関節症の進行は、人それぞれです。多くの場合、こんなサインから始まります。

  • 初期症状: 本当の初期は、痛みがないことも多いです。症状が出始めると、「立ち上がる時」「歩き始め」といった動き始めや、階段を下りる時に、ズキッとした痛みを感じることがあります。
  • 中期症状: 痛みを感じる場面が増え、正座がしづらくなるなど、膝の動きが制限されてきます(これを「可動域制限」と言います)。痛みが強く出る時期と、そうでもない時期を繰り返すことも特徴の一つです。
  • 末期症状: 変形がさらに進むと、夜、じっとしていても痛むようになります(夜間痛)。歩くこと自体が辛くなり、日常生活に支障をきたし、車椅子が必要になる方もいます。

変形性膝関節症の検査と診断|問診・診察・レントゲンの流れ

病院では、あなたの膝の「今」を正確に知るためのステップを踏んでいきます。

  1. あなたのお話を聞く(問診) 「いつから、どんな時に痛みますか?」「昔、膝をケガしたことはありますか?」など、あなたの言葉が一番のヒントになります。
  2. 膝の状態を直接確かめる(身体診察) 膝のどの部分(内側、外側、お皿の周りなど)に痛みがあるのかを確かめます。また、膝の曲げ伸ばしがスムーズか、膝を支える靭帯はしっかりしているかなども、実際に触れながら丁寧に確認します。
  3. 膝の中を覗いてみる(レントゲン検査) 骨の状態を確認し、軟骨がどれくらいすり減っているか(骨と骨の隙間が狭くなっていないか)を評価します。日本人はO脚の方が多く、膝の内側の軟骨からすり減っていくケースが典型的です。

ここでとても大切なことをお伝えします。**レントゲンでの変形の強さと、あなたが感じている痛みの強さは、必ずしもイコールではありません。変形が強いのに元気に畑仕事をしている80代の患者さんもいれば、60代で変形も強くなくても痛みで生活に支障が出てしまう人もいます。だからこそ、画像だけで判断せず、あなた自身の症状と向き合うことが何より重要なのです。

変形性膝関節症の治療法|リハビリ・薬・手術という3つの柱

さて、ここからが、あなたの未来を変えるための大切な話です。変形性膝関節症には、幸いなことにたくさんの治療選択肢があります。大きく分けると、治療には3つの柱があります。

  1. リハビリテーション(運動療法)
  2. 薬物療法(お薬や注射)
  3. 手術療法

私がどの患者さんにとっても必須であり、治療の土台だと考えているのが**「リハビリテーション」**です。 これは、膝を支える筋肉という名の「天然のサポーター」を鍛え直し、硬くなった部分をしなやかにするアプローチです。いわば、家を支える土台や柱を、あなた自身の力で補強していくようなもの。弱った筋肉、硬くなった筋肉は人それぞれ違うので、理想は理学療法士という専門家と一緒に、あなただけの「オーダーメイドの補強プラン」を立てることです。

**「薬物療法」**は、痛みを和らげるためのサポーターです。飲み薬や湿布、ヒアルロン酸の注射などがこれにあたります。雨漏りをしている時に、床が濡れないようにバケツを置くようなもので、根本的な解決にはなりませんが、辛い痛みをコントロールし、前向きにリハビリに取り組むためには非常に重要な治療です。

そして、これらの治療で改善が難しい場合の選択肢が**「手術療法」**です。すり減った関節の表面を金属やプラスチックでできた部品に交換する「人工関節置換術」や、骨の角度を調整して体重のかかる場所を変える「骨切り術」などがあります。

この他にも、ご自身の細胞を用いて軟骨の再生を目指す「再生医療」という新しい選択肢も登場していますが、まだ誰もが保険診療で受けられる段階には至っていません。

治療の主役は、あなた自身です

たくさんの治療法をお話ししましたが、一番大切なのは、**「あなたがどうなりたいか」**という希望です。

私は、治療の全体像を丁寧にご説明した上で、あなたの年齢、日々の活動量、膝の変形の程度、そして何より「旅行に行きたい」「孫と散歩がしたい」「畑仕事を続けたい」といったあなたの希望をじっくりお聞きします。

その上で、あなたにとってのベストな治療法、つまり、あなたの目的地へ向かうための最適な「航路」を一緒に考えていきます。私が一方的に治療法を決めることは決してありませんので、どうぞ安心してくださいね。

まとめ

変形性膝関節症は、「年のせいだから」と諦めてしまうような病気ではありません。 世界中、そして日本中の多くの方が、あなたと同じ悩みを抱えています。 しかし、その正体を知り、リハビリテーションという名の正しいメンテナンスを続けることで、進行を穏やかにしたり、痛みと上手に付き合っていくことは十分に可能なのです。そのためにも、早めに専門医に相談し、ご自身の膝の状態を正確に知ることが、未来への第一歩となります。

まだまだお伝えしたいことはたくさんあります。症状ごと、治療法ごとのさらに詳しいお話も、これからどんどん発信していきますので、ぜひご覧ください。

さあ、あなたの回復への旅(航海)を始めましょう。Bon Voyage!

免責事項

本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を保証するものではありません。症状に心当たりがある方は、必ず医療機関にご相談ください。

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